1960年代後半のリーバイス・ビッグE「ダブルネーム]とは?

2024-03-23

ビンテージリーバイスのジーンズ等の中で、通称「ダブルネーム」と呼ばれている商品があります。
「ダブルネーム」は、ジーンズ以外にもあるのですが、以下、ジーンズの「501」を想定して話しを進めることとします。

「ダブルネーム」とは一体全体どのようなジーンズなのでしょうか?
上に掲載した写真の紙パッチの左下部分をご覧くださいませ。(何故わざわざ見にくい斜めに写真を撮ったのか責任問題ですな。)
ロット番号の表記が二段にわたって、二つ記載されていることがわかるでしょう。
“501/501″、"911K/519 1132″ 上段は小さな文字で旧ロット番号、下段が大きな文字で新ロット番号です。

 

「私のリーバイス」の記事から記載を引用します。

1967年にリーバイスは、主要デニム製品のロット番号名の変更を行います。(品番変更は、1966年という説もありますが、いろいろ入手している資料から、67年の可能性が高いと考えています。)
それまでパッチに表記されていたロット番号、501XXは501(501-0117)、501ZXXは502 (502-0117)、551ZXX は505 (505-0217)、557XXは70505 (70505-0217)にそれぞれ変更になりました。ヴィンテージリーバイス501には、通称ダブルネームと呼ばれるモデルがあります。
ダブルネームは、パッチに表示される501や505等のロット番号の上に小さな文字でさらにロット番号が表記されている=パッチ上に二つのロット番号が表記されていることから名付けられたと思われます。

リーバイス社は、1966年12月1日、それまでの商品ロット番号を変更して、新たな商品管理番号=プロダクトコード(ここでは新ロット番号と呼びます。)を導入しました。
(「501XXは誰が作ったのか?」青田充弘著[第1刷第3版]では、243頁からその辺のことが書かれています。この本では、ロット番号の変更日は1966年12月1日と記述しています。なお、この書籍は副図書として必ず1学期が始まるまでに各自購入しておいてください。)
この変更により、今まで「501XX」等に表記されていた「XX」等のアルファベット文字が消え、数字のみ3桁+4桁のコードとなります。
新旧のロット番号を紙パッチに併記したのは、ロット番号変更前後の混乱を避けるためと考えるのが一般的なようです。
「ダブルネーム」の「501」が生産されたのは、通称「501XX(ダブルエックス)」の直後で、通称「タイプ物」の直前の時期である1966年前後の非常に短い期間です。
もしかしたら、その生産期間は1年にも満たないかもしれません。

今さらながら、ワタクシが「ダブルネーム」について書こうとしているのは、そもそもなぜロット番号を変更したのか?という点です。
LVC(リーバイス・ヴィンテージ・クロージング)では、この「ダブルネーム」を1966年モデル(1966-501)として復刻販売しています。
本家リーバイスジャパンのHPには、その辺の事情の記載は一切ありませんが、1966-501を販売するお店のサイトには、下記のような記述を見つけることができます。
リンクも店名も記載しないので、気になる方はご自分で検索してみてくださいな。

LEVI’S Vintage Clothing[リーバイス ヴィンテージ クロージング]の1966モデル 501。1966年、501は品質の高さが広く認知されたとして、丈夫なデニムを意味するXXの省略を決定しました。ただし、新しい501が従来の商品と同じ事を示すため、ペーパーパッチに501と旧品番の501XXの2つの品番を併記していました。その当時の復刻版が501 66年モデルです。

1967年に全品番を変更したリーバイスは、1966年だけ501と501XXという2つの品番をペーパーパッチに併記しています。当時の501は品質の高さが広く認知されたとして、丈夫なデニムを意味する『XX』の省略を決定。ただし、始めは新しい501が従来の製品と同じことを示す為、旧品番の501XXが小さく併記されていました。その”66モデル”の復刻版がこの『501 1966年モデル』です。バックポケットの隠しリベットは廃止され、糸によるバータック(カンヌキ止め)で補強する新仕様となり、それを記載した新しいフラッシャーを採用。その下部に入る1966の年号も”66モデル”の特徴です。

また、YouTubeでも同様の主旨の発言をしている方が複数いました。
高品質を表わす「XX」を省略するべ ⇒ ロット番号から「XX」も外して新しい番号さ付けるさ ⇒ パッチに新旧ロット番号併記するべさ
この「XX省略」説は、どこから来たものなのでしょうか?
復刻1966-501に附属するペーパー類に記載されているのか?
別冊Lightning「All About Vintage Denim(ヴィンテージデニム大全)」(2010年10月発行)の30項にも同様の記載があるので、火元はともかく、遅くとも2010年には一般的な説として広まっていたのでしょう。
さて、こんな書き方をすれば、勘のいいご貴兄は薄々お気づきのことでしょう。
そう、ワタクシ、この説(XX省略説)が全くもって気に入らんのです。
いやだって、その一連の流れ、それはナイでしょう。
そんな取締役会とか、会社のしかるべき部署での会議の様子がアナタの頭に浮かびますか?
そんな会議であったでしょうと言われれば、会社勤めをしたことがないワタクシは口を噤むしかありませんがね。
「1960年代後半のリーバイス・ビッグE「タイプ物」について-1/2」でも書きましたが、この頃のリーバイス社は、”いけいけ、どんどん”の大企業です。
“いっちゃえ、リーバイス”で、世界でもトップクラスの企業へ拡大路線まっしぐらてなもんです。
そんな大企業がですよ、家庭内企業みたく”501は品質の高さが広く認知されたから、「XX」は省略するかねぇ”はないでしょう。
しかも、紙パッチのロット番号に「XX」表記があったのは、デニム生地を使ったパンツ(とジャケット)だけでしょう。
上に掲載した写真の「911k=519-1132」は、ピケと呼ばれる生地で作ったパンツで通称ピケパンとよばれていますが、このピケパンに限りませんが、もともと「XX」表記のない商品も多く存在していたのです。
ちなみに、「501XXは誰が作ったのか?」では、その理由を、今までの簡単なロット番号と「XX」表記だけでは商品の分類が難しく、コンピュータでの管理を簡単ににするためとしています(意訳)。
うむ、ワタクシが妄想する(またかよ!)理由に近くなってきました。
紙面の都合もありますので(いや、無いけど。)、
そろそろ、お得意のワタクシの小さな灰色の脳細胞が導き出した結論を述べましょう。

ズバリ!「Distribution Center配送センター)」(以下、「D.C.」という。)のためです。
(ちびまるこちゃんの丸尾くん風で)

なんだか、デジャブ?
1960年代後半のリーバイス・ビッグE「タイプ物」について-1/2」でも同じようなこと言ってたよね。
そう、「ダブルネーム」の根本も、「タイプ物」のお話しに繋がっているのですよ。

がんがん売りまくりたい ⇒ D.C.からの出荷早くするべ ⇒ 新コンピュータシステム導入するべ ⇒ 数字だけのロット番号の方が都合が良い

「タイプ物」のときに書きましたが、1967年にリーバイス社は、San Jose(CA)、Amarillo(TX),Kentucky(KY)の3か所のD.C.に新しいコンピュータシステムをインストールしました。
つまり、この新コンピュータシステムインストールのために、アルファベットが入る旧ロット番号を廃止して、単純な数字文字列だけの新ロット番号を導入したのです。
もちろん、新ロット番号の下4桁の前2桁は生地の種類、後2桁は色を表わす等の意味を持たせて。「0117」なら01=生デニム、17=インディゴ色等。
ワタクシのこれまでの人生は、縫製業界・服飾業界には全く疎遠なものでしたが、コンピュータ・IT関係に関しても全く接点がございませんでしたので、認識が間違っていたらすみませぬ。
でもね、「501XXは誰が作ったのか?」に掲載された内部文書の書類を良く見ると、モロに書いてあるのです。

Why all the numbers on Catalog Listings?
Because we are changing over from our present lot numbers system to a Product Code – to provide faster, more efficient service from our distribution centers.
(なぜカタログに数字だけが並んでいるのですか?現在のロット番号システムから製品コード(新ロット番号)に変更し、物流センターからより迅速で効率的なサービスを提供するためです。)

「1967新コンピュータシステム」を河口の目的地に置くことで、上流にあった多くの事象や謎だったモノがスムースに流れ始めるのです。
「501」で言えば、隠しリベットの廃止、Vステッチから平行ステッチへ、トップボタン裏のアルファベット刻印から数字刻印へ、「ダブルネーム」、「タイプ物」…。
もちろん、リーバイス社にとって、「1967新コンピュータシステム」という河口は通過点に過ぎず、最終目的地は「会社の発展」という大海なのでしょう。
そして、その大海に至る川の流れは、常に「合理化・効率化」という理念によって司られているのかもしれません。

上の方で、”新旧のロット番号を紙パッチに併記したのは、ロット番号変更前後の混乱を避けるためと考えるのが一般的なようです。”と書きました。
もちろん、それはその通りなのですが、旧番号と新番号との違いによる消費者の誤解を避けるためではなく、リーバイ社のためだったと思うのです。
「1967新コンピュータシステム」を目標に諸々のスケジュールを計画するうえで、新ロット番号導入日と商品生産日を一致させることは難しいでしょう。
紙パッチに新旧ロット番号を併記することで、D.C.に搬入された日が新ロット番号導入日の前後どちらになっても対応可能になる。
つまり保険的な記載であって、「タイプ物」のときにも書いた通り、紙パッチに記載されるのは、あくまでも消費者に届く前に必要な情報だと思うのです。
そう考えると、「ダブルネーム」の生産期間は極めて限定的だったと言えるでしょう。
501「ダブルネーム」が生産された
詳細な期間であるとか日付を特定しようもないのですが、同様に紙パッチを欠損した個体を「ダブルネーム」と特定することもできません。
もちろん、隠しリベットなし、ビッグE赤タブ、Vステッチ、アルファベット刻印を持つなら、「ダブルネーム」の可能性はあるけれど、「ダブルネーム」とは言えないのです。
判読可能な新旧ロット番号の記載ある紙パッチを残し続けた個体のみしか「ダブルネーム」と名乗る権利はありません。
ワタクシは、常日頃「93米国最終501」を愛してやまないと公言しています。
しかし、今、歴代の501で一番好きなモデルはどれかと問われるならば、こう答えるでしょう。
501「ダブルネーム」と。
紙パッチのみが、その唯一のアイデンティティーの証とは、なんて儚いのでしょう。
手に入れたところで、穿かないでしょうけど。
お後がよろしいようで。(完)

 

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Posted by shiba-ken