リーバイス501とコーン・ミルズ【4】ヴィンテージデニムとドレイパーX2とマグナドラフト
※この記事は、「INVENTORY」(VOLUME04 NUMBER08 SPRING-SUMMER 2013)の Paul Trynka氏の「CONE MILLS: THE HOME OF AMERICAN DENIM 」記事、同氏のBlog「loom state」から引用し、加筆したものです。
幅広シャトルデニムは1950年代から
1980年代半ばまでセルビッジ付きの狭幅のシャトルデニムが標準であったなどというのは間違いであり、コーン・ミルズ社や他のデニムメーカーは、生産効率向上のために、すでに1950年代からドレイパーX3を含む幅広のシャトル織機を導入していました。セルビッジ(赤耳)を「501」の本質的要素としていたのはリーバイスだけであり、そのためにコーン・ミルズ社は、古い幅狭の「ドレイパーX2」を1983年頃まで維持し続けました。
60年代から70年代デニムの魅力はマグナドラフトの動作不良の副産物
1958年頃に発明され、その直後にコーン・ミルズ社で導入された「サコ・ロウェル・マグナドラフト(Saco-Lowell Magnadraft)」は、紡績工程の生産効率を加速させ、糸の品質が大幅に向上しました。
紡績における「ドラフト」とは?、以下東大阪繊維研究所ブログを引用します。
東大阪繊維研究所ブログ 紡績 その3
様々な工程を経て出来上がった粗糸は引っ張りながら撚っていけば糸になります。
この引っ張りながら撚る工程を精紡といいましてここにも色んなノウハウがあります。
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精紡のもうひとつの要素として粗糸の引っ張り加減を調整する工程があります。これはドラフトと呼ばれます。
粗糸の段階では仕上がりの糸の太さが確定しておらず、どれだけ引っ張って伸ばすかで最終的な糸の太さ(番手といいます)を決めていくわけです。
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また、ドラフトの段階で引っ張り加減を随時変えていくことで部分的には18番手、部分的には22番手というふうに糸の番手に凹凸を加えていくことも出来ます。これがいわゆるスラブ糸と呼ばれるものの基本的な作り方です。
このようにドラフトで粗糸を引っ張って伸ばしながら撚りをかけたものが紡績糸としての一先ずの完成形になります。
サコ・ロウェル・マグナドラフトとは、このドラフト工程での粗糸の引き伸ばしのための加重ロールに「磁石」の力を採用したシステムのことです。
マグナドラフトが”うまく動作”していたときには、紡績の品質が各段にに向上しました。
しかし、ヴィンテージデニム好きの観点から見ると、このマグナドラフトの魅力は、必ずしも常にうまく機能しなかったことにあるのです。
このシステムに冠された「磁石」の強さは、時間とともに変化し、徐々に効果を失っていきました。
その結果、システムの”握力”が低下し、糸に不均一さが生じてしまったのです。
この紡績における”意図しない糸の不均一”さこそが、後にヴィンテージジーンズ好きが虜になる、ヴィンテージデニム生地の”不整合さ”の正体です。
もちろん、この時代のコーン・ミルズ社の染色技術、リーバイスの「501」のためだけに木製の床で稼働させていたドレイパーX2織機による織布等の複合的な産物ですが。
