リーバイス「L」「16」「653」刻印(続-16刻印の謎の真相に迫る!)
60年代リーバイスのジーンズのトップボタンの裏に刻まれたアルファベット #L 。
この #L は、70年代に#16、80‐90年代に#653と代わるアメリカ合衆国のBaldwyn(Mississippi州)Lucky-Star-Industries, Inc.の工場だと思われます。
(ミシシッピ州ボールドウィンのラッキースター社)
#16→#653の工場がBaldwynのLucky-Star社の工場であったという事実は世間に大分認知されてきたようです。
ワタクシが知る限りでは、trunkuptokyo様の投稿によって世間に知れ渡った事実であるということをあらためて付記しておきます。
#L → #16については、確固たる証拠はございません。
しかしながら、下記に掲げた1966年までに開設された工場のリストを見る限り、#L を使用する工場は、Lucky-Star-Industries, Inc.しかないように思われます。
11 | F | 1 | 555 | San Francisco (CA) -Valencia street- サンフランシスコ・ヴァレンシアストリート | 1906 |
12 | J | 2 | 558 | San Jose (CA) サンノゼ | 1933 |
13 | - | - | - | Santa Cruz (CA) サンタクルーズ | 1944 |
14 | W | 4 | 585 | Wichita Falls (TX) ウィチタフォールズ Great Western Garment Company 社(TX)を買収 *[カナダのGreat Western Garment Companyとは別会社] | 1946 |
15 | S | 5 | 650 | Sedalia (MO) シデーリア J.A.Lamy 社(委託) | 1946 |
16 | E | 6 | 524 | El Paso (TX) エルパソ *#16=The Top-Notch Manufacturing Co.(委託のちに買収) | 1947 |
- | - | - | - | Vallejo (CA) ヴァレーホ | 1949 |
17 | D | 7 | Denison (TX) デニソン | 1949 | |
18 | K | 8 | 532 | Knoxville (TN) -Cherry street- ノックスビル・チェリ-ストリート | 1953 |
19? | 581 | Warsaw (VA) ウォーソー | 1953 | ||
20? | L | 16 | 653 | Baldwyn (MS) ボールドウィン Lucky Star 社(委託) | 1958 |
R? | 513 | Blue Ridge (GA) ブルーリッジ | 1959 | ||
- | Blackstone (VA) ブラックストーン | 1962 | |||
- | M? | 3 | 536 | Maryville (TN) メアリーヴィル | 1962 |
- | V ? | 575 | Valdosta (GA) ヴァルドスタ Oberman Manufacturing 社(買収) | 1963 | |
- | 546 | Murphy (NC) マーフィー | 1963 | ||
- | A ? | Amarillo (TX) アマリロ | 1965 | ||
- | 552 | San Angelo (TX) サンアンジェロ | 1965 | ||
- | O | 52 | 527 | Fayetteville(ARK)フェイエットビル Oberman Manufacturing 社(買収) | 1966 |
ご参考☞1950年代~1970年代のリーバイス社の工場番号(ボタン裏刻印)&所在地(妄想感強め)
ということで、#L に関する記事は、非常に薄い内容をもちましてさらっと終了です。
いくらなんでも薄すぎるので、申し訳程度に少し付け足します。
ワタクシは過去に「#16(16番工場、16刻印)の謎の真相に迫る!」と題した記事を書きました。
下記にリンクを貼りますので、是非読んでみてください。
https://shibaken.work/post-4862/2023/4862/
上記の記事の内容を4行で要約してみましょう。(だったら読ませるな。)
1.16番工場は、2つあった。
2.1966年までは、エルパソ工場(実質1962,3年まで)
3.1967年以降は、ボールドウィンのラッキースター社工場
4.1970年代の16番工場の501のイレギュラーな仕様は、外注工場だったから
さて、ワタクシは、上記4の「イレギュラーな仕様は、外注工場だったから」に少々疑問を持っていました。
そう、自分で書いておきながら、この部分が今一つ腑に落ちていないのです。
#16工場が外注工場だったという事実が世間にある程度広まったにも拘わらず、この点に文句を言っている人は見当たりませんが、この場で少し検証してみたいと思います。
まずは、上の方に載せた1966年までの工場リストをあらためて見てみましょう。
#W-4ウィチタフォールズ、#S-5シデーリア、#E-6エルパソ、#V?バルドスタ、#О-52フェイエットビル
これらの工場は、全てリーバイス社の自社工場ではなく、外注工場です。
リーバイス社は大変合理的な判断を下す会社で、初期の工場は開設の費用を抑えるために既存の他社工場を利用する選択を取ることが多くございました。
では、上記各外注工場でつくられた製品も、#16工場と同様にイレギュラーな仕様が目立つのでしょうか?
厳密に比較したわけではないし、比較できるわけもありませんが、決してそんなことはないでしょう。
#E・6エルパソートップノッチ社、#Vバルドスタ?・#О・52フェイエットビルーオーバーマン社については、1966年に買収が成立し、1970年代は「子会社の工場」として親会社としての目が届きやすかったということもあるかもしれません。
それでは、#S・5シデーリア-ラミー社の工場はどうでしょう。
#16ラッキースター社と対等に比較すべき対象は、同じような外注工場であった#5ラミー社です。
ラミー社は1946年、ラッキースター社は1958年にリーバイス社と提携を開始し、両者とも買収されないまま1998年にその歴史に幕を下ろしています。
#5ラミー社は1970年代に多くの505を製造していますが、#16ラッキースター社のイレギュラー仕様のような話しは聞きません。
共に歴史あるリーバイスの外注会社でしたが、実は、両社には決定的な違いが1つあります。
#5ラミー社の製造する製品は100%リーバイスブランドだったけれど、#16ラッキースター社は自社ブランド製品も作っていたのです。
その点も、#16工場のイレギュラーな仕様の理由の一つではないでしょうか。
①#5ラミー社は形式的には外注工場だけれど実質的に子会社と変わらない立場であり、#16ラッキースター社は形式的にも実質的にも外注工場であり、リーバイス社は口出しし難かった。
②(極端に言えば、)#16ラッキースター社は自社製品の資材や縫製方法をリーバイスの製造にも適用してしまっていた。
(③1970年代はフラワームーブメントの真っ只中であり、会社としてはフレアージーンズ推しで、501を軽視していた。)
③はどうでもいいとして、やっぱり ”1970年代の16番工場の501のイレギュラーな仕様は、外注工場だったから” は間違っていなかったということでしょうか。
当ブログでは度々引用する「LEVI STRAUSS & CO. : TAILORS TO THE WORLD」というレポートには、#W・4ウィチタフォールズ-GWC社、#S・5シデーリア-ラミー社、#О・52フェイエットビルーオーバーマン社についての記述はいくつかあるのですが、#L・16ラッキースター社については一言も触れられていません。
それが両社の関係性を表しているというのは早計でしょうが、とにかくラッキースター社については情報が少なく(ワタクシの調査の仕方が悪いのかもしれませんが)、未だになお謎多き会社・工場であることは間違いありません。
(完)
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赤い羽根BLOGのトビウオギタオ氏(面識はございません)が、ワタクシの16工場の記事を引用してわかりやすくまとめてくれていますので(多謝)、ご参考まで。